昭和大学発達障害医療研究所(以下、研究所)は、2013年に昭和大学附属烏山病院に開設した成人発達障害専門外来を持つ研究所です。成人の自閉症スペクトラムと注意欠如多動性障害を主な対象として、質問紙調査から最新の脳科学研究に至るまで、発達障害に関する幅広い臨床研究を実施しています。
研究所と作業療法士との関わりが深い部署は精神科デイケア(以下、デイケア)です。精神科デイケアは、薬による治療ではありません。社会で生活しやすくするためのスキルや考え方を、同じ悩みをもつ仲間たちと共に学び身につけていく場所で心理社会的な治療とも呼ばれています。医師や看護師、精神保健福祉士、心理師らと共に作業療法士も関わっています。
烏山病院の精神科デイケアでは、研究所が中心となり開発された発達障害に特化したプログラムを実施しています。このプログラムは、青年期・成人の自閉症スペクトラムに対して全国に先駆けて開発されたものです。プログラムの有用性が検証され、2018年度より診療報酬にも反映されるようになりました(保険の範囲で行うことができる有効な治療として認められたということです)。作業療法士は、プログラムの開発やマニュアル作成の際に研究チームの一員として関わり、現在もプログラムを実施しながら、さらなる知見を重ねています。最近では、発達障害を有する大学生に対するプログラムやピアサポート(障害を見持つ当事者同士が支え合う仕組み)を促進するプログラムの開発にも関わっています。
研究所と烏山病院は同じ敷地内にあり、また兼務するスタッフもいるため密な交流がもたれ、臨床現場の声がダイレクトに研究に結びつく環境、雰囲気があります。デイケアでの実践が研究所の研究活動を支え、デイケアでは最新の研究成果を基に患者さんに関わり、サービスを提供することができています。作業療法士は、研究での成果を臨床へ還元し、臨床での気づきや疑問を新たな研究へと発展させていく良好な循環をつなぐ、役割を担っています。また、成人期発達障害に対するプログラムは全国的にも先駆的な取り組みであり、実際の様子を聞きたい、知りたいと多くの講演の依頼や見学者が訪れます。実際にプログラムを実施している作業療法士が対応し現場の生の声を届け普及、啓発の役割も担っています。
